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校長室から

484 パンダ(24.10.2)

 昔懐かしい防虫剤のにおいが、前を歩く人から漂ってきます。少し涼しくなったので、タンスやクロゼットから出された上着類から発せられているのかもしれません。「ナフタリン」や「ショウノウ(樟脳)」といえば、まさに箪笥の匂いだったのですが、わかる人も少なくなったと思います。

 昔懐かしい響きは、「瀬戸物」というワード。茶碗や湯呑みなどの陶磁器が、家庭で使われますが、これらの割れ物を称して「瀬戸物」と言うのだとばかり思っていた子供時代。全国各地ある焼き物にはそれぞれの名前がついていますが、瀬戸物が愛知県瀬戸市を中心に作られる陶磁器のことだと知ったのはいつでしょうか。

 さて、ジャイアントパンダ2頭が、13年過ごした上野動物園から中国に返還されました。思い出すのは1972年10月に初めてパンダが来日した際のフィーバーぶり。日本と中国の国交が結ばれた記念に、中国から贈られたランランとカンカンを一目見ようと長蛇の列ができました。2時間待って見られるのが30秒ほど。回転寿司のレールよろしく、歩みを止めず人の背中の向こうにいるパンダをチラ見という感じでした。「上野動物園といえばパンダ」というイメージが植え付けられた出来事でした。

 孫の誕生日に絵本はどうかと思って、いろいろと手にしてみました。その中の『パンダ銭湯』、脱衣所で黒い部分を脱いでいく様子がコミカルです。また、アニメ『パンダコパンダ』にも描かれるように、パンダはとても穏やかなイメージです。実際、攻撃性は低いとされますが、やはりクマ科ですから…。

 中国に帰るパンダに大勢のファンが別れを惜しんで集まりました。開園前の暗いうちから集まった人は皆、黒装束。ガラスに自分が映りこまないようにするためといいます。観覧のマナーという人もいるくらいですから驚きです。中には何年もの間、毎日パンダに会い(愛)に通うコアなファンもいるというからさらに驚きです。そういう人は、パンダの顔写真で名前を全部言い当てます。

 実力より話題性やルックスで注目を集めて、集客の要とする「客寄せパンダ」という言葉がありますが、人の興味や関心を惹きつける魅力は、パンダにあやかりたいものです。

483 仮面の下(24.10.1)

 10月になったためか、スタッドレスタイヤのTVCMを見た朝は、どんよりした天気。

 初夢で見るとめでたいものとして、「一富士二鷹三茄子」は有名で、これに「四扇五煙草六座頭」と続きがあることは以前書いた記憶があります。ほかにも、辛抱強くがまんすることを「桃栗三年柿八年」と言いますが、これも「柚子の大馬鹿、十八年」と続き、「子供は風の子」に「大人は火の子」がセットになります。最近知って「へぇ~」と思ったのが、「根掘り葉掘り」。これで完結ではないようで、「ごぼうの根まで」というフレーズがくっつきます。「井の中の蛙大海を知らず」も「されど空の青さを知る」という続きがあったのです。昭和の言葉に「男は度胸、女は愛嬌」があります。現在、こんなことを口にすると、各方面から批判が殺到しそうです。でも、これもここで終わりではなく「坊主はお経」とラップのような韻を踏んでいます。

 さて、車の運転、あるいは運転中につぶやく言葉に、その人の本性が現れると言われます。車に乗るということは、車というシールドに覆われることになります。つまり、密閉された空間、あるいは仮面と言い換えてもよいかもしれません。だから本当の自分をむき出しにできる場所といえます。つまり、ハンドルを握ると人が変わるのではなく、運転にその人の奥底が全部表れているということのようです。あおり運転などはその最たるものかもしれません。

 そういう人は、ストレスをためやすかったり、人のせいにすることが多かったりするといった特徴があるといいます。様々な状況下で冷静な判断力がマヒして、「自分は正しい」「相手が悪い」と主観的な状況判断に陥ることが原因とされます。こうした傾向は車種によっても違うようです。高級車や大型車に乗ることで自分の価値を高めすぎてしまうともいいますから要注意?!

 そんなこと「百も承知、二百も合点」と思いながらも、自分のことを諫める私です。

482 数十年前の理科授業(24.9.30)

 10月を前に、愛知県瀬戸市で来年の干支「巳」にちなんだヘビをかたどった焼き物の出荷が最盛期を迎えたと新聞にありました。11月になると年賀はがきの販売が始まります。それを前に明日から85円に値上げですから、今年は年賀状をどうしようか思案中。同じような思いを抱える人は少なくないはずです。いっそのこと今回で年賀状じまいもアリかと悩む今日この頃。

 キッチンで滅多にしない調理をしていると、目の前をコバエが横切ります。できるだけ生ゴミを置かないようにしていても、どこからともなく発生するコバエが鬱陶しい。コバエホイホイなる商品まであるくらいですから、どこの家でも悩みの種なのだと思います。

 そういえば小学生のころ、理科でコバエ(ショウジョウバエ)を使った実験をしました。集気瓶にバナナを入れておいてショウジョウバエを集めて…。でも何の実験だったかという記憶は定かではありません。高校だと遺伝について学ぶ内容なのでしょうが…。また、ニワトリの卵を孵化させる実験・観察もしました。暗幕を張った部屋で卵に光を当てて血管を透かして見たり成長していく様子を確認したりしました。学校には卵を定温管理できる孵卵機があったものです。そのほかにも、高度ともいえる学習をしていたことを思うと驚きです。

 一方、指導する側になってからの理科の内容も現在とは違います。ジャガイモのでんぷん反応は4年生で扱いましたし、流水のはたらきを校庭で観察したり流水実験場で水を流して確かめたりしました。高学年では、音の伝わり方の実験やものの燃え方で木炭作りまでしました。光の進み方の学習では、プールの下の真っ暗な配管スペースにクラス全員でもぐって、「目に見える」という現象について考えたことも思い出されます。現在とは一味違った、科学・物理に係る思考力や洞察力が問われるものばかりでした。どちらが良い悪いという問題ではなく…。中高と進むにつれて選択教科となりますから、出会わないまますれ違うだけの内容も多くなります。だからこそ、普段の何気ない事象や現象にもハテナを感じて、調べ進める子供たちであってほしいと強く願います。

481 家庭訪問(24.9.27)

 昨日は4年生の落語教室で、生の落語を聞きました。落語は、頭の中で色々と想像することが多いので、ボケ防止にもよいかもと勝手なことを思います。先週、文化庁が発表した「国語に関する世論調査」では、読書機会の減少が浮き彫りになりました。ひと月に本を読まない人が6割以上にのぼり、読書離れが顕著です。でも、読書に浸る時間の楽しさ、想像を巡らす面白さを多くの子供たちにもっと味わってほしいと思います。だから、落語を聞いたり「学校まるごと図書館」の本を読んだりことが、その小さな一歩になればうれしい限り。10月にはラベルを貼り始める予定で、現在進行中です。

 少し前に読んでいた小説に、家庭訪問の場面がありました。今は居所を確認するだけの学区訪問のみという場合が多いのですが、以前は日時を決めて各家庭を徒歩や自転車で回っていました。入学・進級後の4月下旬から5月中旬の1週間程度が割り当てられた大きなイベントだったといえます。子供は親から部屋の片づけを厳命され、親は話す内容やお茶菓子を考えなくてはいけない面倒なものだったはずです。各家庭や子供の状況、保護者の要望を早い段階で把握して、きめ細かくフォローすることが目的でした。子供たちが交代で案内役をしてくれることも多くありました。次の家までの時間配分に余裕を設けていても、話が延びてしまったり家を見つけられないことがあったりして押せ押せになるあの焦りが蘇ってきます。

 あの頃、各家庭で飲み物や食べ物を用意してくれます。飲んだり食べたりしなければ用意してくれているのに申し訳ないですし、食べる家とそうでない家があれば気を悪くさせてしまうかもしれないしと、若かった私は私なりに葛藤があった時代です。保護者も用意するものが被らないように連絡を取り合っていたのかもしれません。

 家に上がることが多かったわけですが、嫌だった家庭もきっとあったはずです。玄関先に腰かけて話すことだってありました。ただ、実際に顔を見て一対一で話すことで、双方の距離を縮めるよい機会であったことは否定できません。元気な声と笑顔、話し方やその内容など、「今なら」と思うことが当時の自分には全然できていなかったことを、今更ながらに反省と後悔、そして恥ずかしさが一気にこみ上げます。

480 虫偏(24.9.26)

 夏休みに、毎年素敵な昆虫標本を作ってくる子がいます。今年は、これまで以上にボリュームアップした作品に驚かされましたし、採集した蝶などの説明は尽きることがありません。それほど好きなものがあるのは、羨ましいことであり強みだと思います。例えば、本・ダンス・音楽・電車・アニメなど好きなものがあって、他者にはオタクに映ったとしても、その分野に精通すればそれは誇ってよいことだと思うのです。

 さて、蝶や蜂、蚊など昆虫類の漢字は「虫偏」が使われます。でも、虫の仲間ではないのに「虫偏」がつく漢字も時々見られます。例えば、はまぐり。貝類なのに「蛤」と書きます。古代中国では、人でも獣でも鳥でも魚でもないことから、虫に分類されていたといいます。では「蛸」はどうでしょう。中国ではアシナガグモに使われる漢字で、日本では使われていませんでした。おそらく8本の足がクモのように見えたからではないかと推測されています。驚くことに、自然現象の「虹」でも「虫偏」が登場します。やはり古代中国でのこととなりますが、虹は龍が作り出すものと考えられていて、ヘビを表す「虫」と(大空を)貫くことを意味する「工」を組み合わせたことに由来します。

 PCなどの文書作成ツールで入力すれば、誤変換にだけ気をつければよい現代、表示される漢字に何の疑問も入り込む余地なく使ってしまいます。必然的に学習能力も低下。でも、よく考えると不思議がたくさんあることに気づきます。例えば「海」が使われる漢字ですが、正しく読めたのか不安になります。「海星」「海月(水母)」「海豚」「海象」「海獺」「海豹」など難解なものも…。

 漢字っておもしろいって言って、漢字辞典を広げる子がいたら最高!偏や旁(つくり)などで、寿司屋の湯飲みみたいな作品が登場するのも粋では?

  《よみ:ヒトデ・クラゲ・イルカ・セイウチ・ラッコ・アザラシ》