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校長室から

591 君に届け!(25.3.21)

 小さなことや当たり前の景色にも気づける人であってほしくて、卒業生に贈ったメッセージの一つを記します。

 例えば、急に雨が降ってきた時、鞄の中にある折り畳み傘を思い出して、「あ~、持ってきてよかった」と安心します。でも、その雨の中を家に帰って湯舟に浸っている時に、「あ~、家に屋根があってよかった」と思う人はまずいません。普段から雨風をしのいでくれる屋根はすごい。にもかかわらず、ありがたいと思うことはないのです。また、災害等で停電になった時、闇を照らす懐中電灯やスマホの灯りをありがたいと思っても、普段私たちを照らしてくれる太陽や月の光をありがたいと感じることもないのではないでしょうか。つまり、大きいが故に気づきにくいのです。

 今回、卒業を迎えることができたのは、どんな大きな存在があったからなのでしょう。それは、親以外の何物でもありません。家の屋根であり太陽の光となって、ずっと守り照らしてきたのです。それに気づけない子は、辛いときに雨宿りできる心の居場所を見失うことになりかねないと心配します。

 だから小学校卒業に際して、「親への恩返しをしてください」とお願いしました。決してプレゼントしたり肩揉みしたりするということではなく、今すぐでも、十年後であってもできること…。それは「今、私幸せだよ」と言える心や体でいることではないでしょうか。心から「幸せ」って言えることだと思うのです。だって私も含めて、子どもの幸せが親の幸せでもあるからです。子供が嬉しそうに笑顔でいる姿を見て、親は幸せを感じます。生まれたばかりの時も、今も、二十歳になった時やその先もずっと変わりはしません。

 もう一つ、自分の人生で一番尊い存在である自分自身を見失わないように伝えました。仮に、磯野カツオという人の人生では、カツオ君が主人公であって、浪平さんやフネさん、ましてやサザエさんではないことは明らかです。どんなにあこがれの有名人がいたとしても、自分の人生においては、脇役かそれ以下でしかないわけです。「自分という存在も実は大きくて、とても尊い」ということさえ忘れなければ、知れずと勇気が湧いてくると考えます。そして、親から受け継いだその命も、一つの恩だと考えて大切にすることだって立派な恩返しであり、恩送りになると思うのです。

 ちょっとばかり長かったので、どの程度子供たちに届いたかは定かではありませんが…。