校長の部屋

022 何を想う②(5/11)

 昨日の続きです。

 アメリカのある地方に野球観戦が大好きな、でも、目の見えない少年がいました。少年は大リーグで有名なホームランバッターに憧れていたそうです。その選手へファンレターを書きました。

 「ぼくは、目がみえません。でも、毎日あなたのホームランを楽しみにしています。手術をすれば見えるようになるのですが、怖くてたまりません。あなたのような強い心がほしいです。ぼくのヒーローへ。」

 この少年のことをテレビや雑誌の記者が知って、二人の対面が実現しました。カメラのフラッシュの中、少年はヒーローに約束します。「もし、あなたが今度の試合でホームランを打ったら、ぼくは勇気をもって手術します」と。

 さて、試合当日。この日まだホームランのないヒーローの最後の打席。3ボール2ストライクのフルカウント。テレビや新聞を見た多くのファンが息を殺すように見守り、少年自身もテレビの中継を祈る思いで聞いていました。ピッチャーが投げた最後のボールは、大きな空振りとともに、キャッチャーミットに突き刺さりました。アメリカ全土から大きなためいきが漏れようとしたその時、「ホームラン! 月にまで届きそうな、大きな大きなホームランです!」とアナウンサーが叫んだのです。

 三振をホームランと言ったのですから、嘘をついたのです。この嘘をどう感じるかは、人それぞれだと思います。

 相手を想い、自分の気持ちをどういう言葉で、あるいはどんな行動にして相手の心に届けるのかということをもっと大切にしたいなぁと思わせる2つの話です。形がなくてすぐに消えてしまう言葉であっても、手紙やメールなどの文字であっても、相手の気持ちを意識して、責任をもって届けようとすると、言葉や文字から温かさが滲んでくるのではないかと思うのですが…。たくさんの人が一緒に生活をする学校や学級で大事にしたいことの一つです。