校長の部屋

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129 楽しみ方もいろいろ(11/30)

 ある日の天声人語を読んでいたら、本を包むジャケットを外して中にある表紙のデザインを確かめる読書家がいると知りました。「ジャケットはお化粧、中の表紙は素顔。その違いを楽しみたい」とか。最近では、文庫が映画化されるとジャケットが二重になる場合が多々あります。元のジャケットの上に、映画の主人公の写真などがあるジャケットが被さって手に取りたくなるような工夫なのでしょう。でもこれは、先の読書家からすれば厚化粧以外の何物でもないでしょう。

 というわけで、文庫や単行本数冊の素顔を見てみることにしました。すると、文庫本はどれも何の変哲もないものでした。一方、単行本の全てではありませんが工夫があるものも…。例えば、『白鳥とコウモリ』(東野圭吾 著)は、ジャケットを都会の写真で飾り、中の表紙は草むらの中の一軒家風の写真が見られます。また、『ツバキ文具店』(小川糸 著)のジャケットは、物語の舞台の場所をイメージするイラストであり、中表紙は題名からくる文房具類のイラストで埋め尽くされています。

 こういう見方があることに驚きでしたし、新鮮さを感じました。でも、書店で一冊ずつ中表紙を確認しているおじさんは異様に映るでしょうからやらないことにします。ただ、多様な「ものの楽しみ方」があることに気づかされたのでした。みんなちがって みんないい?

128 結果<プロセス(11/29)

 MLBエンゼルスの大谷翔平選手が満票でMVPを受賞しました。これを受け、花巻東高校時代の恩師のコメントが印象的でした。「指導者として一番幸せ」と述べ、「野球選手として素晴らしいかった、というところじゃない。勉強も全教科平均で85点くらい。しっかり寮の掃除もして、提出物も出し、生き方自体が素晴らしかった」と。「野球さえ頑張れば他はどうでもよい」という人物でないからこそ、日米関係なく愛されるのだと思います。

 選手同様、それを支える人々にもスポットライトを当てたいものです。そういう意味で、先の大谷選手の通訳 水原氏に、エンゼルスの「最優秀通訳賞」が贈られたのはうれしいニュースです。

 こちらはサッカーですが、イタリアやトルコのクラブでも活躍した、日本代表DF長友選手を支えた奥様(平愛梨さん)の言葉があります。海外生活を支えたのは、お母さんの教え「顔で笑って心で泣きなさい」という言葉だったといいます。そして、辛いことも多い現代社会を強く生き抜くコツがとても参考になります。“例えば私のことを悪く言う人がいたとしても、いろんなタイプの人がいていい。良くも悪くも『言われる』ってことは『その人の人生に私がヒットした』と思うんです。私の存在がちょっとでも引っかかってくれたんだと思うと、すごくポジティブに前向きになれます。”と語っています。(WEBザ・テレビジョン11/18)

 結果も大事ですが、そのことだけを評価するのではなく、結果に至るプロセスを大事にする姿。私たち教職員も子供たちも、結果以上に「何をどのようにしたか」という過程に目を向けながら子供たちを支えていきたいと考えます。

127 氷の話2(11/26)

 スキーやスケートのシーズン到来。ちなみに、私自身どちらもやりませんが…。

 昨日に続いて、今日も氷のお話。氷といえばアイススケート、そしてそのリンク。一般の体育館を巨大なスケートリンクに仕上げてしまいますし、大会が終われば元通りになるのがとても不思議です。調べてみると、専門業者が防水シートや断熱材、床補強パネルなどをミルフィーユ状に何層にも重ね、冷却管を張り巡らすそうです。そこに散水して、1回に0.5mmくらいずつ、120時間ほどかけて厚さ8cmの氷ができあがるといいます。今シーズンもフィギュア選手権がすでに始まっていますが、華麗な演技とともに選手が4回転ジャンプを繰り返してもヒビ一つ入らないアイスリンクの頑強さも、観戦の視点に加えようと思います。

 話は逸れますが、「セブンイレブン」といえばコンビニの代名詞ともいえます。でも、その発祥はアメリカ・テキサス州で繁盛していた氷小売販売店だったことを知りました。「氷だけではなく、牛乳やパン、卵なども売っていたら便利なのに」という客の要望があって、氷以外の日用品取り扱いを始めたところ評判になったようです。これがセブンイレブンの始まりであり、「コンビニエンスストア(便利な店)」の認知の拡大につながったとされています。いまさらながら、コンビニ商品の充実・進化には驚きを隠せません。お世話になるのはお弁当。そして、ロックアイスも…。いよっ、元氷屋さん!

 ただ、コロナのせいかわかりませんが、「この間までここにコンビニがあったのに…」というケースが少なくない気がします。

126 氷の話1(11/25)

 南極の氷塊をいただきました。冷蔵庫で作った氷とは違って、常温で置いておいても簡単に溶けることはありません。この南極の氷にお酒を入れてグラスを傾けると、ピチピチッという音が何とも気持ちよいのです。初任の時に、放課後の校長室へ呼ばれて南氷洋の氷を入れたブランデーをご馳走になった時の響きが蘇ります。残念ながら、今回その音を私の耳がとらえることはできませんでした。

 いただいた氷に、絵葉書大の写真が添えられています。そこに書かれた文がロマンを誘います。

『南極の氷』:南極大陸に降り積もった雪は、長い年月をかけ、押し固められて氷となります。やがてそれは巨大な氷河や棚氷へと成長し、それらの一部が崩れ落ちて海に流れ出たものが氷山です。この氷はその氷山から切り出したものです。

 グラスの中に氷を浮かべて、そっと耳を近づけてみてください。小さな気泡が、ぷちぷちと音を立てて出てきます。それは数万年前の空気が氷の中に閉じ込められたものです。氷の奏でる音色に耳を傾けて、太古の地球に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。〔海上自衛隊 砕氷艦しらせ 観測協力行動2013.11.8-2014.4.7〕

 また、国立極地研究所の『南極観測』という資料があります。開いた1ページ目に “南極を知ることは、地球の未来を読み解くことです” とあります。キャリア教育の一環で、様々な職業を調べますが、南極観測隊を取り上げた児童を未だ見たことがありません。知る機会がないからでしょう。最後のページには “あなたにも南極観測隊の一員として活躍するチャンスがあります” と記されています。その構成員は、電気、車両整備、発電、建築・土木、通信、環境保全の技術者のほか、大学研究者、医師、調理師、安全管理や庶務担当など多岐にわたります。子供たちには、こうしたことに携わる人々もいることも知っておいてほしいと思います。南極の氷をおすそ分けできないのは残念ですが…。

125 お世話になっています(11/24)

 だいぶ冷え込んできました。ポケットに手を突っ込んで、転倒時に手が出なかったということがないようにしたいものです。

 さて、寒くなると給食の汁物がひときわありがたく感じます。学校給食との縁は、教員になってからだけで30数年、自分の小中学生時代を入れたら、人生の3分の2以上の長きにわたってお世話になっていることになります。一方、学校職員でない限り、給食からは縁遠くなります。でも、懐かしく思い出されるメニューはいくつかあると思います。今でこそ市川市で使用されている食器にはかわいいイラストが散りばめられ、強化磁器となっていますが、その前まではアルマイトの食器に先割れスプーンだったわけです。

 人気は、今も昔も「揚げパン」でしょう。カレーも学校給食ならではの味わいで大人気。昔は「鯨の竜田揚げ」「冷凍ミカン」「ソフト麺」「焼きそば」がよく登場していたように思います。バナナも丸々一本!「ミルメーク」も袋入りの粉末で、牛乳瓶に入れて溶かしていましたから、飲み終わる頃には甘さが増していったのです。今では、お取り寄せメニューもあるようで、人気なのが「ソフト麺ナポリタン」「冷凍パイン」「コーヒー粉末ミルメーク」「原宿ドック・チーズワッフル」など。

 市川市は、学校単独で給食をもつ自校給食がほとんどです。でも、自治体によっては給食センター方式を採用する場合もあります。児童が配膳された給食を、栄養士ほか調理に携わる方々とを結びつけて考えることができる今のシステムが続いてほしいものです。

 そして、学校給食の目標の一つに掲げる「学校生活を豊かにし、明るい社交性及び共同の精神を養う」ためにも、全員が黒板の方を向いた黙食から解放される日が待ち望まれます。

124 気軽な乗り物だからこそ(11/22)

 車の希望ナンバーに多いのが「11-22」ですが、自動車事故が毎日のように報じられます。

 今月11日、世田谷区の交差点で、自転車が左折してきたトラックにはねられ、自転車に乗っていた女性が軽傷、紐で抱っこされていた乳児が死亡する痛ましい事故がありました。翌12日には、茨城県で登校中の女子生徒が、左折したトラックにはねられ、意識不明の重体という事故も発生しました。ともに、「自転車には気づかなかった」「確認が不十分だった」とドライバーは話しています。さらに、同日、自転車に乗って塾に向かう男子中学生が、歩道を歩いていた高齢男性とぶつかり死亡させています。

 原則、車道の左端を走行することを定める自転車は、免許制でもなければ年齢制限もない気軽さがあります。「車道は危ないから歩道を走れ!」というのは自動車側の言い分、あるいは保護者の思い。一方、「軽車両とされている以上、車道を走れ!」。これは交通弱者ともいえる歩行者の言い分でしょう。

 コロナ禍により需要を伸ばしたフードデリバリー、公共交通機関の利用を控えた通勤・通学の足として自転車利用は増えています。また、今年初め頃から電動キックボードまでもが車道を走るようになっていますが、曖昧な立場の自転車はどこを走行すればよいのでしょう。

 朝の14号門前歩道を、子供たちに向けて邪魔だと言わんばかりの形相で走り去っていく自転車もあります。時間と心に余裕をもって事故を未然に防ぎたいものです。明日も安全で楽しい休日であることを心より願っています。

123 ちょっとした変化に気づく(11/19)

 先週、メガネのフレームを父が少しの期間だけ使用したものに替えました。形は大きく変わりませんから誰も気づきません。でも、ひまわり学級の教室に入った途端、ある児童から「眼鏡を替えた?」と尋ねられました。感覚なのか記憶なのか、その鋭さにびっくりしました。もしかすると、メガネや髪形、服装が一体となった校長像ができていたのかもしれません。

 ただ、気づいて声をかけてくれると嬉しいものです。ですから、子供たちの髪型や身長、服装など、ちょっとした変化に気づいて声をかけてあげたいと思います。この「変化に気づいて声をかける」ということが家ではできずに呆れられています。家具の配置や家の中の装飾の変化、美容院へ行った後の妻の髪など、「きっと気づかないだろう」と期待されていないことが悲しい!

 さて、今夕、部分月食が観測できるといいます。5月下旬の皆既月食に続いて今年2度目となりますが、今回は約98パーセントが欠ける「ほぼ皆既月食」なのだそうです。4時半前に始まり、6時頃が最も大きく欠けます。天気さえ大丈夫なら、この変化は私にもわかります。同じ空、同じ月を一緒に見上げてみませんか?

122 古くなっても(11/18)

 60歳という年齢を実感した、最近の出来事。

 自分の口座から出金する必要があって、銀行窓口に用紙を提出。すると、アンケート用紙への記入や請求書などの提出を求められました。尋ねると、60歳を超えた人が一定額以上を引き出そうとする場合に、振り込め詐欺の被害を防ぐために行うそうです。私って、金融機関では高齢者の仲間入りを果たした人物だったのです。確かに、襟巻きとかタートルネック、ズボン下なんて言葉が未だに自然と口から出てしまうのですから。

 さて、ここ10年近く、ゆとり世代とかZ世代の間で「昭和レトロブーム」が起こっているといいます。先日は、レコード復活のニュースを見ました。テレ東の原田知世さん主演ドラマ『スナック キズツキ』を観ていますが、店内の様子が「昭和」の装いで落ち着く感じです。純喫茶も流行っているといいますし、無印良品のメロンソーダが爆発的に売れたとも聞きます。「古臭い」「親父臭い」と忌み嫌われていたものたちが、若者たちに受け入れられているということです。景観を敢えて古めかしくした商店街をニュースでも取り上げていたほどです。

 人間だって年齢を重ねて味が出てくることもあります。ただ、学校の職員は子供たちに囲まれているせいか(若さのエキスを吸っている?)気持ちだけはいつまでも若くいられるような気がするのです。でも、身体はちゃんと衰えていることを認識していないと、無理をして肉離れを起こしたりけがしたり…。気をつけます。

121 対話して初めてわかること(11/17)

 すれ違う通行人。話しかけられたのかと思ったら独り言?いえ、Bluetoothで通話をしている人のようです。こうした人と結構出会います。比較的大きな声で、しゃべりながら歩いているのを見るたびに、違和感を感じてしまいます。聞きたくもないのに勝手に他人の会話が飛び込んでくるのですから…。といっても、私には内容は聞き取れていません。

 先週あたりからわんぱくタイムや昼休み、放課後などの時間を使って、6年生の何人かと個別に話をする機会がありました。「自分のよいところは?」「中学校に行って、どんなことをしたい?」など、質問をしてみました。どの子もしっかり考えを持っています。ただ、それを相手にどう伝えるか、どう伝わるかまで意識しているかどうかは不明です。

 校長と面と向かって話をするなんて、小学生にとってみれば緊張を強いられる以外なにものでもありません。心臓の音が聞こえてきそうな子だっていましたから。以前、中学校の校長先生から聞いたことがありますが、受験を控えた3年生と面接練習でのこと。緊張に耐え切れずに泣き出す子がたまにいるといいます。

 ですから、堂々と自分の思いを語る子を見たとき、「もっと話をしたら面白そうだな」と感じさせるのです。それこそこの子の良さであり、人間的魅力です。

 昨年も書きましたが、コロナ以前は、今頃から給食を校長室へ運んで4~6人のグループと会食を始めていました。130人以上いる6年生ですから30グループ近くと会食する計算になります。これは結構大変ですが、児童の為人(ひととなり)を知る絶好の機会です。また、こうしたことがあると、教室に訪問した時の子供たちの見え方が変わってくるから不思議です。さらには、卒業式の証書授与が特別な瞬間になるのです。それが叶わないことを恨めしく思ってしまいます。

 だから、まるで独り言のような会話をするより、面と向かってたくさん話ができるときが早く訪れますように…。

120 小学生だって(11/16)

 10月末に、5年生のある学級がハロウィンにお化け屋敷を計画しました。子供たちだけで企画・運営をしたそうです。当然、担任の力添えはありますが、物事を創り上げて成功させたいと思う意欲がうれしく思います。仮にうまくいかなくても、その過程には大きな学びがあるはずです。逆に成功を収めた時の満足感は大きいでしょうし、自信につながり次の活動意欲へと発展します。全校での学習発表会などができれば、総合的な学習で学んだことをほかの学年の人や保護者に訴えて、自分たちの主張を広めていくということも可能です。ぜひ思いを形にする挑戦を続けてほしいと思います。

 さて、先月の生徒指導部会で、名札と黄色い帽子の着用、そしてチャイムの必要性が話題に上りました。子供たちが自分事として考えて、問題提起することができるようになったらどんなに素晴らしいだろうと思うのです。昨年度の6年生が、学校宿泊の校長許可をもらうために、計画書持参で校長室に説明に来たのを思い出します。また、宿泊する夜の学校近隣の見回りを警察にお願いしている場面もありました。校則の見直しを生徒会が中心となって行った高校の話を読んだことがありますが、小学生にだって、強い意志と行動力があればできることはあります。学習も同様です。

 そうした願いが、学校教育目標に掲げる「意欲・行動・自信・創造のサイクル」には込められているのです。