校長の部屋

112 前期が終わります(10/30)

 今日は前期の終了式。残念ながら、まだ直接子供たちの顔を見て話す機会は訪れません。今日の話を紹介します。家庭でも話題にしていただけると嬉しいです。ちょっと長くなります。 

 読書週間中に児童から届いた読書郵便の一つに「忘れても好きだよ おばあちゃん」という題名の本がありました。アルツハイマーのおばあちゃんと主人公のお話です。主人公の女の子は、おばあちゃんの病気をよく理解して、おばあちゃんを優しく支えているのです。

 気づかないだけで、アルツハイマー以外にも困っている人はたくさんいます。当たり前と思っていることでも、実はそうでないことを、「耳」を例にお話しします。

 耳の役割は?と尋ねられたら、ほとんどの人が「聞くこと」と答えるでしょう。「体のバランスをとる」という働きを答える人がいるかもしれません。その場でぐるぐる回ると、フラフラして倒れそうになります。真っすぐ走ることができることも耳の働きによるものです。

 私は、虫の声は聞こえません。音を聞き取る部分に障害があるからです。みんなには聞こえても私には聞こえない音をいくつか挙げます。例えば、蝉の声、ホイッスル、鉄琴やトライアングル、ハンドベル、電子音など。話し声も同じです。テレビでは字幕がないと内容の半分もわかりません。教室で皆さんの発表やつぶやきも、マスクをして口の動きが見えないので伝わっていないことが多くあります。

 この「聞こえが悪い」というのは、決しておじいさんやおばあさんだけの問題ではありません。世界では、3億6千万人もの耳に障害をもつ人がいて、そのうち10人に1人が子供だと言われています。皆さんの中にも、「聞こえにくい」とか「何度も聞き返してしまう」という人がいるかもしれません。人によっては「右は聞こえるけど、左の耳は聞こえない」という場合だってあります。でも、恥ずかしいことではありません。むしろ、相手に知ってもらった方が理解してもらえると思います。

  

 耳に困り感を抱える人がいた場合、それを助けてあげられるのは周りの人の気持ちと行動です。「はっきり、ゆっくり話す」「聞こえる方の耳から話す」「紙に書いて見せる」など、できることがあるのです。そうしたことで、聞こえなかったことが「わかる」につながることが増えていきます。

 耳の障害以外にも、目や手足、言葉などで困っていて理解してほしいと思っている人はたくさんいます。また、自分の心をうまくコントロールできないために、ほかの人から見ると変な行動をとっているように見えてしまう場合だってあります。

 皆さんが当たり前に聞こえる、見える、行動できると思っていることの中にも、ちょっとだけ心配りやお手伝いを必要とする人がいるということを覚えておいてください。